私が初めて本格的に遊んだMMORPGは、『ファイナルファンタジーXI』でした。
いわゆるFF11です。
当時の私には「ゲームの中に、自分以外の人がいて動いている!」ということ自体が新鮮でした。
タルタルの白魔道士で始めました
FF11を始めた私は、タルタルという小柄な種族を選びました。ジョブは白魔道士です。
白魔道士は回復魔法で仲間を助けるのが得意なジョブです。
……仲間がいれば、ですが。
始めたばかりの私には、当然まだ一緒に遊ぶ人なんていません。仕方がないので、出発国のウィンダス周辺で、一人で敵を倒して経験値を稼いでいました。
敵を殴る。自分を回復する。弱体魔法をかける。また殴る。そしてまた自分を回復する。
なかなか前に進みません。
当時のFF11は、一つレベルを上げるのにもかなり時間がかかりました。まして白魔道士は、防御力も攻撃力もそれほど高くありません。
世界はとても広いらしい。
でも私は、今日もウィンダスの近所で敵を殴っていました。
近くに、もう一人のタルタルがいました
そんなある日、近くで同じように一人で敵と戦っているタルタルがいました。
私と同じタルタルですが、使っている魔法から見る限り、どうやら向こうは黒魔道士。たしか、どちらからともなく挨拶をしたんだと思います。
何か特別な出来事があったわけではありません。ただ、近くで同じようにレベル上げをしていた。それがきっかけで少し話をして、初めてフレンド登録をしました。
FF11で、初めてできたフレンドです。
それからしばらくは、二人でウィンダスの近くをうろうろしながらレベルを上げていました。
一人で自分に回復魔法をかけながら敵を殴っていたころより、ずっと楽しくなりました。
初めて遠くへ行きました
私は当時それなりに忙しく、長い時間ログインすることができませんでした。その間にもフレンドは別の人たちと知り合っていたようです。
ある日、そのフレンドから遠くの狩場へ誘われました。
ウィンダス周辺のサルタバルタを離れて、向かったのはタロンギ大峡谷。それまで近所をうろうろしていた私にとっては、かなりの遠出です。
そこでまず驚いたのが、
でかいキリンがいる。
ダルメルという、キリンのような大きなモンスターです。小さなタルタルから見れば、なおさらでかい。
世界が急に広くなった気がしました。
白魔道士って、こうやって遊ぶのか
そこで初めて6人でパーティーを組みました。
前で敵と戦う人がいる。魔法で攻撃する人がいる。そして私は白魔道士なので、仲間を回復します。
それまで自分にばかり使っていた回復魔法を、初めて本格的にほかの人に使いました。
ああ、白魔道士って、こうやって遊ぶのか。
ようやく本職に就いたような気分です。
しかも、一人や二人で戦っていたころより経験値がどんどん入ります。あんなになかなか上がらなかったレベルも上がっていきました。
FF11って、こうやってみんなで遊ぶゲームだったんですね。
ずいぶん経ってから気づきました。
フレンドリストにはいるんだけど
ただ、私は相変わらず長時間ログインできません。私がいない間にもフレンドは冒険を続けるので、だんだんレベルに差がついてきました。
当時はレベルが大きく違うと、一緒にレベル上げをするのも簡単ではありません。
フレンドリストを開けば名前はある。ログインしていることも分かる。
でも一緒に遊べないと思うと、「何してる?」と声をかけるのも、なんとなくためらってしまいます。
喧嘩をしたわけでもありません。
ただ、少しずつ一緒に遊ぶことがなくなっていきました。
セルビナで再会しました
そんなある日、海を渡った先にあるセルビナという街で、偶然見覚えのある名前を見つけました。
最初にフレンドになった、あの黒魔道士のタルタルです。
待ち合わせをしていたわけではありません。お互い別々に冒険していて、広いヴァナ・ディールの中でたまたま再会しました。
そこから二人で、セルビナ近くのバルクルム砂丘へ行きました。
久しぶりに二人で、海岸にいるカニなんかを倒します。
昔は二人で敵を一匹倒すのにも苦労していたのに、ずいぶん戦えるようになっていました。
夕陽に照らされて
戦いが一段落して、二人で波打ち際に座りました。
「僕たち、強くなったね~」
「ここに座っていても、もう絡まれなくなったんだね~」
FF11では、強い敵の近くにいると見つかって襲われます。座って休んでいるところを襲われることもありました。
でも、もう大丈夫。
昔とは違います。
ウィンダスの近所からなかなか出られなかった二人が、今では海を渡った先まで来ています。
ゲーム内では夕方。夕陽が二人の顔を染めています。
……。
ガスッ。
ガスガスッ!
なんか殴られてる!
見ると、さっきまでいなかった強いモンスターが、すぐ近くに湧いていました。
全然、大丈夫じゃありませんでした。
そのあと二人で逃げたのか、戦ったのか、それとも仲良く倒されたのか。
そこはもう、よく覚えていません。
その人の顔も、本名も知りません。
それでも20年以上経った今でも覚えている、オンラインゲームで初めてできたフレンドとの思い出です。
顔も本名も知らない友達ができた、っていう、そんな噺です。
