「働き方改革」が「働かせ方改革」になってない?って噺

働き方
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「働き方改革」という言葉を聞くようになって、ずいぶん経ちました。

「長時間労働を減らしましょう!」
「仕事を効率化しましょう!」
「そのためにデジタルを活用しましょう!」

うん。
いい話です。

私自身、長いことICTに関わる仕事をしていますから、デジタル化には基本的に賛成です。

昔なら何時間も、何日も、ときには何か月もかかっていた仕事が、パソコンを使ったらあっという間に終わった。

そんな例はいくらでもあります。

最近では生成AIまで登場して、仕事のやり方そのものも大きく変わり始めています。

便利になりました。
本当に、便利になりました。

なのに、です。

私たちの仕事って、本当に楽になっているんだろうか。

ときどき、そんなことを考えます。

ひょっとすると「働き方改革」が、

「働かせ方改革」

になっていたりしないでしょうか。

目次

「効率化した」のは、誰の仕事?

たとえば、ちょっとサンプル数の多いアンケート。

昔なら紙に書いて提出して、それを誰かが1枚ずつ確認しながら集計していました。

大変です。

では、デジタル化しましょう。

Excelに入力してもらう。
あるいはWebフォームに回答してもらう。

すると数字は自動で集計されます。

素晴らしい!

時短です。

ところが、下の方から眺めてみると、少し景色が違うことがあります。

指定されたフォーマットに合わせて情報を集める。

組織内の回答を誰かが取りまとめて、さらに指定されたシステムへ入力する。

そして、ときどきやってきます。

「今年から様式が変わりました」

ああ、変わりましたか。そうですか。

作った側からすれば、Excelの列を一本増やしただけかもしれません。

ところが、それを100の組織に配れば、100か所で、

「あれ? これ去年と違うぞ」

という戸惑いが発生します。

集計する側では「業務を効率化できました」。

でも、その向こう側では新しい仕事が生まれている。

あれ?

仕事って、減ったんだっけ?

仕事は減ったのか、移動したのか

もちろん、誰かが、

「よし、面倒な仕事は下へ押しつけてやろう」

なんて考えている、という話ではありません。

たぶん、それぞれが自分のところの仕事を効率化しようとしているのでしょう。

ある部署で10時間かかっていた集計作業が、1時間になった。

9時間の削減です。

立派な業務改善です。

ところが、そのために100か所で10分ずつ入力作業が増れたらどうでしょう。

さらに、

「ファイルが開きません」
「マクロが動きません」
「去年のデータをコピペできません」

なんてことも起きる。

すると、

仕事の大変な部分が、形を変えて別の場所へ移動しただけなんじゃないか。

という気がしてきます。

デジタルは、人の仕事を簡単にしてくれました。

でも同時に、

人に仕事を頼むことまで簡単にしてしまった。

これは、ちょっと考えてみてもいいところだと思います。

ボールペンは「パスワードが違います」とは言わない

紙に名前を書いて、いくつか○を付けて提出する。

数分です。

ところが、手にしたボールペンが書けない。

困った。

どうするか。

別のボールペンを使う。
以上。

ところがパソコンとなると、そうはいきません。

端末が起動しない。
Wi-Fiにつながらない。
ログインできない。
多要素認証が通らない。

そして画面には無情にも、

「パスワードが違います」

と表示される。

いや、合ってるんだけどなあ。

だったら別のパソコンを使えばいい。

……ともなりません。

アカウントがあります。
認証があります。
アクセス権限があります。

もちろん、どれも必要です。

ただ、

一つの仕事をするまでに越えなければならないハードルは、確実に増えている。

デジタルに慣れた世代になれば全部解決する、という話でもありません。

若い人が使えばWi-Fiが切れない、ということはありませんからね。

まあ、だから私の仕事もあるわけですが

もっとも。

「つながりません」
「ログインできません」
「昨日までできたのに今日はできません」

と言われて、

「どれどれ」

と見に行く。

そういうことも私の仕事です。

つまり私は、

デジタル化によって生まれた困りごとを解決することで仕事をしている。

……。

あまりデジタル化の悪口を言わない方がいいのかもしれません。

仕事がなくなってしまいます。

まあ、それは冗談として。

こういう場面を日常的に見ていると、

デジタル化=効率化

と単純に考えるのは、ちょっと違うんじゃないかな、と思うのです。

そしてAIがやってきた

そこへ生成AIがやってきました。

文章を書く。
挿絵を描く。
資料を整理する。
グラフを作る。
調べものをする。
プログラムを書く。

いろいろできます。

私も日常的にAIを使っています。

そして使っていて感じるのは、

仕事が速くなっただけではない。

ということです。

今まで自分にはできなかったことまで、できるようになりました。

特にプログラミングでは、それをよく感じます。

自分一人なら、

「ここから先はちょっと難しいな」

となるところでも、AIに相談しながら進めると、それなりに動くものができたりします。

「おお、動いた!」

これはうれしい。

素直にうれしいです。

そして問題は、ここからです。

仕事が「できてしまう」

以前なら、

「これは時間がかかりそうだから、今日はここまで」

で終わっていた仕事があります。

ところがAIを使うと、

「もうちょっといけるんじゃない?」

となります。

指示を出す。

結果が返ってくる。

「あ、できてる」

そこで終わればいいんです。

ところが、

「じゃあ、ここだけ直しておこう」

と、また指示を出す。

「あ、直った」

そこで終わればいいんです。

本当に、そこで終わればいいんです。

ところが、

「だったら、こっちも……」

となる。

おかしい。

AIを使えば仕事が早く終わるはずでした。

なのに、

仕事が終わらない。

理由は分かっています。

私が次の仕事を始めるからです。

布団に入った。これで仕事は終わりです

夜、パソコンから離れて布団に入ります。

今日の仕事はこれで終了です。

……。

「そういえば、さっきの実行結果どうなったかな」

気になります。

スマホを見る。

「あ、うまくいってる」

よかった。

これで安心して寝られます。

……のはずなのですが、

「じゃあ、ここだけもう一つ……」

となります。

便利だから、できてしまう。
できてしまうから、やってしまう。

しかも困ったことに、

実はちょっと楽しいんです。

昨日までできなかったものが動いている。

今日一日で、ここまでできた。

妙な充実感があります。

だから見てしまう。

そして、またやってしまう。

誰かに強制されているわけでもないのに。

最初は私がAIに仕事をさせていたはずです。

ところが気がつけば、

なんとなく自分が「AIに仕事をやらされている」ような感じまでしてきます。

もちろんAIは、

「さあ次の仕事をしなさい」

なんて言ってきません。

言っていないのに、やる。

誰にも働かされていないのに、

自分で自分を働かせている。

これでは「働かせ方改革」への不信を抱かせた犯人は、自分ではないか。

困りました。

そもそも効率化って、何なんだろう

10時間かかっていた仕事が1時間で終わるようになった。

素晴らしいことです。

では残った9時間で、さらに9時間分の仕事をする。

……。

それでいいんだっけ?

10時間かかっていた仕事を1時間で終わらせて、

残った時間をどう使うかを自分で決められる。

そちらもまた、効率化なんじゃないでしょうか。

「できるようになったこと」と「やった方がいいこと」は同じではない。

夜でも仕事はできます。

布団の中でもできます。

でも、

「できるけれど、今日はやらない」

と決める。

案外これが、これから必要になる「働き方」なのかもしれません。

で、誰が楽になったんだろう

最初の話に戻ります。

デジタル化した。
AIを導入した。
仕事を効率化した。

素晴らしいことです。

では、

誰が楽になったんだろう。

仕事は本当に減ったのか。

誰かのところへ移っただけではないのか。

空いた時間に、また別の仕事を詰め込んでいないか。

そして最後には、

自分で自分に仕事を詰め込んでいないか。

働く人が楽になるために技術を使うのか。

技術を使って、もっと効率よく人を働かせるのか。

それとも、便利になった結果、自分で自分をもっと働かせてしまうのか。

デジタルもAIも、私はこれからも使います。

だって便利だし、そもそもそういうものが大好きですから。

でも、

便利になることと、人が楽になることは、どうやら同じではない。

そんなことを考えながら、今日はここまでにして布団にもぐろうと思います。

……。

さっきAIに頼んだやつ、そろそろ終わってるかな?

「働き方改革」が「働かせ方改革」になってない?っていう、そんな噺です。

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この記事を書いた人

デジタルのことや神社のこと、趣味や日々の中で気になったことを書いています。自分自身の記録も兼ねたICT310の管理人です。

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