前に、自宅に草の根BBSのサーバーを立てた話を書きました。

最初は通常の電話回線兼用でのスタートでしたが、夜中の着信等の問題から専用回線を引きました。
ところが、この回線に誰かが外から接続している間、ほかの人がログインできないから回線増やそうかな、というところまでが前回のお話です。
今なら「回線を一本増やす」と言っても、それほど大したことではないように聞こえるかもしれませんが、当時は、結構面倒でした。
一人分の席を増やすにも、お金がかかった
電話回線を増やすには、当時のいわゆる「権利」が必要で、これが結構よいお値段でした。
当然、回線に繋ぐモデムももう一台必要になります。
さらに、パソコン側にはRS-232Cの端子が1つしかないので、端子を増やすためのボードも必要でした。
つまり、
同時にもう一人ログインできるようにするだけで、結構なお金がかかる。
そんな時代でした。
そもそも、通信費とかを抑えようとして草の根BBSを始めたはずなのに、気がついたら設備にまたお金をかけることになっています。
節約したかったんだか、使いたかったんだか。
まあ、楽しかったんでしょうね。
好きな話を、たくさんしたかった
もう一つ、自分でBBSを持ちたかった理由があります。
好きな話を、気兼ねなくたくさんしたかった。
NIFTYにはたくさんのフォーラムがあって、私はわりと頻繁に書き込みをしていましたが、当時は今のような定額接続ではありませんでした。
みんな時間や電話代を気にしながら接続して、新着の書き込みを読んでいた時代です。
せっかくお金をかけて新着を読みにいったのに、開いてみたら、いつも同じような人たちの書き込みばかり。
それをあまり歓迎しない人がいたのも、今考えればよく分かります。
私もたぶん、ちょっと書きすぎていました。
「だったら、自分で好きに話せる場所を作ればいいよね?」
そんなことを考えていました。
せっかくなので、いろいろな会議室を作った
BBSの中には、テーマごとにいろいろな会議室を作りました。
クルマ・バイク
パソコン
カメラ
キャンプ
今でいう掲示板ですね。
常連さんたちも、いろいろなところに書き込んでくれていましたが、今になって思えば、
「ここにも何か書いてあげなくちゃ」
と、気を遣ってくれていたところもあったのかもしれません。
ところが、一番賑わったのは、そうしたテーマ別の会議室ではなく、
喫茶「安眠(あみん)」
と名付けた、何の話をしてもいい、ノンジャンルの雑談掲示板でした。
「安眠」という名前は、さだまさしさんの曲「パンプキン・パイとシナモン・ティー」に登場する、コーヒー・ベーカリーの名前からいただきました。

※昭和の大ヒット曲「待つわ」で知られるデュオ「あみん」の名前の由来もここからだそうです。
一番人気は、雑談だった
いろいろな掲示板の中でも、雑談の掲示板が賑わうというのは、自然なことだったのかもしれません。
仕事の話でもいい。
今日あったことでもいい。
好きなアニメの話だってしていい。
オフ会の相談をしてもいい。
ログインしたらとりあえず覗いて、ひと言置いていく。
そんな場所でした。
リアルタイムじゃなくても、会話は続いていた
当時のBBSでの会話は、今のチャットとは違います。
誰かと同時に接続して、その場で会話するというより、
誰かがログインして、書き込みを読む。
ひと言書いて、回線を切る。
しばらくして別の人が入ってきて、それを読む。
そして返事を書いて、また落ちる。
そんなやり取りでした。
実際には同時に接続しているわけではないのに、「誰かがそこにいる」という感じ。
喫茶「安眠」は、そんな場所でした。
ネットの知り合いが、普通の知り合いになっていった
やがて、常連さんたちとは、BBSの中だけではなく、実際に会うようにもなりました。
ファミレスで話したり。
花見をしたり。
カラオケに行ったり。
いわゆる「オフ会」です。
職場の同僚がBBSに登録して、オフ会に来たこともありました。
今の小中学校では、『ネットで知り合った人に会いに行ってはいけません』と教えるのが、まず基本になっています。
でも当時の私たちは、そこまで危険なこととして意識していませんでした。
そして、何度か会えば、もう「ネットの人」ではなく、普通の知り合いになりました。
常連さんの家にお邪魔して、コレクションを見せてもらったり、お茶をいただいたり。
とてものんびりした時代だったのだと思います。
新聞が取材に来ることまであった
開設の翌年、「草の根BBSとはどんなものなのか教えて欲しい」と、地方紙の記者から連絡がありました。
どんな人がログインしているのか。
どんなことを話しているのか。
オフ会の楽しさとは?
記者の方がオフ会に取材に来て、数週間後に記事になりました。
私への取材とオフ会とで、延べ2日にわたる取材が、コンパクトな一本の記事にまとまったのを見て、私はいろいろなことを考えるようになったのですが……。
ログは、もう残っていない
当時はまだWindows 3.1の時代で、BBSの全記録も100MBのHDDに収まる程度。
今ならクラウドの隅に置いても邪魔にならないほどのサイズなのに、手元には残っていないのが残念です。
誰が何を書いたのか。
どんな冗談を言っていたのか。
正確なことは、もう覚えていませんが、
一番賑わったのは雑談の掲示板だったこと。
常連さんがふらっと来ては、ひと言書いて帰っていくのが日常だったこと。
そして、妙にアットホームだったということ。
それだけは記憶に残っています。
ネットに繋いで情報を得るためには、今よりはるかに高いハードルを越える必要があった時代でしたが、それでも人は、
何でもない話を気軽にできる場所
に集まったんですね。
一番人気は、雑談掲示板だった、って、そんな噺です。
